先週末から封切りされたドキュメンタリー映画“O Mistério do Samba(サンバの神秘)"を観る。
客席が明るくなってからも、もっと余韻に浸っていたくて立つのが惜しまれる。外に出てから、なぜか久しぶりに淀川長治のセリフを思い出す。 オズヴァウド・クルーシュ、マドゥレイラ…… 名門ポルテーラのヴェーリャ・グアルダたちが青と白に身を包んで全編に登場する。 ヴェーリャ・グアルダは、サンバのコミュニティのなかで最大限にリスペクトされたオジイ、オバアたちのこと。 モナルコ、カゼミロ、カスキーニャ、アルジェミロ、ジャイール・ド・カヴァキーニョ、ドナ・スリッカ、チア・ドッカ、ドナ・ネネン…… マリーザ・モンチがヴェーリャ・グアルダたちの自宅を訪れインタビューしながら、忘れ去られていた未発表曲音源を発掘してゆく。 映画のなかでパウリーニョ・ダ・ヴィオラがマリーザ・モンチに語る、「ヴェーリャ・グアルダになるのに決まり事はない、誰でもいつからか自然にそう呼ばれるようになるんだ……」 インタビューと音楽の映像がバランスよく流れる。 ヴェーリャ・グアルダたちが歌い、パウリーニョ・ダ・ヴィオラがカヴァキーニョを弾き語り、ゼカ・パゴジーニョをまじえたクアドラでの大合唱…… リオ郊外の貧しい地域で生まれたサンバが、なぜこんなにも美しい音楽文化を育んでいるのか、というのがタイトルの“サンバの神秘"になっている。 同タイトルの著書をだしている文化人類学者エルマーノ・ヴィアナにとってのテーマ“サンバの神秘"は、「メスティーソ=曖昧性によって生まれたサンバが、なぜブラジルの国民音楽=ポピュラー文化となり、ブラジル人のナショナル・アイデンティティーとなったか」だった。捉え方は違うけど、どちらも同じことを伝えているんだなぁ。 基本的に生収録した音楽映像が中心だけど、1曲96年の「Quantas Lagrimas」が収録されている。DVD“Barulhinho Bom"のなかで、マリーザ・モンチが3人のヴェーリャ・グアルダたちと手拍子で歌い、最後の方でオバアのひとりが涙ぐんでしまうあのシーン(もらい泣きします)。 「Quantas Lagrimas」はきっかけになった曲なのかも知れない。 作曲はポルテーラを代表する故マナセーアで、未亡人ドナ・ネネンが思い出を語る。 それに、カロリーナ・ジャボール、ルーラ・ブアルキ・ヂ・オランダというふたりの監督の愛、だなぁ。 ↓オフィシャル・サイト、曲も聴けます http://www.omisteriodosamba.com.br/
by techinho
| 2008-09-03 12:26
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